ネットで管理されつつある我々 シープルになりつつある我々・・・検索、メール、LINE、クラウド、電子カルテは安全か
インターネットは我々の生活にかかせないものとなった。我々は思うがままにネットからいろいろな情報を得たり動画を楽しんだりしている。仲間との連絡も文章だけでなく、そこに写真、動画も添えて、より詳細で具体的で楽しいものとなった。一見便利で自由なネット空間であるが、その中で我々は巧みに、そして強固に統制されているのではないか、と思うことはないだろうか。それはひょっとしたら正しいかもしれない。
私はネットで管理された人間に「シープル」という造語を当ててみた。従順な子羊「sheep」と人間「people」を合わせて捩った造語である。我々は今やインターネット牧場の従順なるシープルになったのかもしれない。ここではそのような事例について具体的に述べていこうと思う。
1 検索
先日、子宮頸がんワクチンについて調べてみた。ひとつ驚くべきことに気がついた。子宮頸がんワクチンの薬害について調べたのだが、その様な記事は検索ではなかなか当たらない。皆様も「子宮頸がんワクチン」ということで検索してみるとすぐに分かるであろう。検索して出てきた記事の全てが子宮頸がんワクチンに肯定的な記事であった。
10年前、小生の娘が子宮頸がんワクチンを打ちにいくというので、当時Google検索で調べると、肯定論と否定論両者にほぼ均等に接することができた。
10年前との状況の違いにいささか驚いた。検索エンジンにはいろいろなものがある。色々調べて、Yandexというロシアの検索エンジンを使ってみると、割と批判的な記事が多く出てきた(註1)。検査エンジンにもそれを運営する会社の「意思」があるのかもしれない。驚かれたであろうか。我々は知らないうちにシープルにされているのかもしれない。
2. メール
メールは便利かもので我々にとって必需品となった。しかしメールは管理する者のハードディスクに収められている、ということを努努忘れてはいけない。つまりメールの管理者は我々の書いたメールを総覧できるのである。「そんなことをするはずはない」とお考えの方もいるであろう。しかし、可能かどうか、と問われたら、可能であろう。
3 Line
今や日本人の9割がLINEを使っていると言う。 LINEというアプリ。実は秘匿性が低いと言われている。と言ってもピンと来ない人が実は多い。確かに他人のLINEの記事を私は見ることができない。しかし、LINEの会社、あるいは、そのハードディスクを管理する者はLINEの全データにアクセスすることができる。これは我々利用者にとって大変まずいことではないだろうか。この記事をお読みになっている方でもLINEをお使いになっている方はきっと多いだろう。思い出してみていただきたい。自分がどのようなことをLINEに載せたか。ここ10数年来の自分の記録になるような方も多いのでは。 人には誰でも秘密がある。恋愛のこと(純愛、不倫を問わず)、自分の病気、家族の病気、会社の秘密、不祥事などなど。これらはすべて自分の弱点になる。これを握られたら相手の思うがままにされてしまう。
「でも何も起こらないじゃないか」という方も大勢いらっしゃる。それはその人に何も起こらないだけ。政治家、政府要人、大会社の重役、大学教授、芸能人、我々の関連で言えば日本医師会の幹部クラスの方など社会に大きな権限や影響力を持っている人には大なり小なり接触しているものと私は予想している。
一般人も知らないうちにフルに利用されている。最近は会社の部署での連絡をLINEで行っているところも珍しくない。LINEで会社の悪口などを語る場合も多いであろう。これが何をもたらすのか思いを馳することが出来るであろうか。LINEからみるとこれはその会社の弱点である。その会社の人間しか知らない弱点である。仮にその会社に影響力を持ちたい別のライバル会社からすれば値千金の情報であろう。時に、合併、吸収、乗っ取り、何にでも極めて有効に使えそうである。どうであろうか。気軽にLINEで仲間内で話した会社の仲間なら誰でも知っているような会社の秘密が他人に握られ、そのことで自分の会社を危うくしてしまうこともあるのだ。そして悪くすると会社が別会社に吸収されることもある。言い換えれば一人のシープルが大会社を潰してしまうことすら可能性としてはあるということである。
LINEが秘匿性が低い、というのはこのようなわけである。つまりLINEにあまりにも入れ込むと、その人はライン牧場のシープルになってしまうのである。
4 クラウド
今や企業もこのクラウドを大いに利用している。ネットが普及してくるとそれを自分の会社のハードディスクで電子管理するようになった。2000年ころに会社でこのような部署で働いている人と話をしたことがあったが、随時ハッキングに晒されかなり大変であるとのことであった。 時代が進み2010年頃からこの様な業務をクラウドの会社に委託する様になったようである。ハードディスクの管理は大変であるがこれは大いにスケールメリットが効く。つまりノウハウがあれば、100テラ程度のデータを管理するのも1億テラのデータを管理するのも手間は同じ様なものである。大きな会社がどんどん値段を下げられる。そして現在、この様にハードディスクを管理する巨大な会社は主に次の4社となった。Google、アマゾン、マイクロソフト、そして、中国である。
社員の出勤状況をGoogle Formやマイクロソフト・ワンノートを使うと実に簡単に、もちろん現場でリアルタイムに出来る。実に便利なようある。しかし、一方でそのハードディスクを管理しているGoogleやマイクロソフトもその会社の職員の勤務状況を把握できるのである。これは企業にとってどのようなものだろうか。
今や勤務状況だけでなく会社の情報のほとんどをクラウドに委託しているようである。いや、これは世界的な傾向である。しかし、そのデータ管理に関してはヨーロッパ系の会社は神経を尖らせている。自分のデータをある大手の会社に任せているがそのハードディスクはアメリカのとある州にあるというのである。会社としてはそのデータを他人が見るなど言語道断であろう。しかしその州で住民が「我々はセキュリティー上、それらにアクセスする権利がある」ということで裁判になったりしている。日系の会社はこの点鈍感なようである。 つまり、当たり前だが、ハードディスクの管理者は全データにアクセスすることができよう。しかもそこにあるのは宝の山である。「そのようなことはしないだろう」と思う方がお人好しすぎはしないだろうか。
私は思うのである。自分のデータはどんなに大変でも自分で管理すべきものである。それを人任せにする企業に栄光はない。衰亡あるのみであろう。データを他人に握られたら、それはシープルになったということである。シープルの運命は決まっている。牧場主の好きな時に毛を刈られ、最後は肉になるだけである。
5 電子カルテ
電子カルテをネットに繋いだ瞬間からハッキングという問題に直面する。それは大きな問題であるがここでは、電子カルテと支配、ということについて語ることとする。
電子カルテを使うと業者に支配される、という構図をイメージできるだろうか。ここが本論の肝である。「4 クラウド」でデータを他人に管理された者は他人の支配を受ける、ということを述べた。
それを踏まえて今の電子カルテの状況を考えてみよう。今、皆様のお使いの電子カルテ。業者が手を引いたら使えなくなるであろう。院内にハードディスクを持つオンプレ型は故障するまでしばらくの間使える。今、多くなりつつある業者が院外でハードディスクを管理するクラウド型に至っては業者が手を引いた瞬間に使えなくなるだろう。
電子カルテを使っていると5 - 7 年で更新の時期を迎える。この時の業者の態度が横柄だと言う話をよく聞く。継続して同じ業者に頼まないと電子カルテの継続という点ですごく問題が生じる。電子カルテを使う医療機関としては選択はあまりない。故に電子カルテ業者は横柄になるわけである。これは見方を変えるとデータを医療機関自身が管理しないで、その管理を業者に任せているために、業者に支配されることになっていると言えないだろうか。故に彼らは支配者然として横柄に振る舞うわけである。「支配」とはこの様な状態を言うのである。AI時代の現代は「支配」とか「独占」ということが油断していると簡単に生じるのである。ということを踏まえると、クラウド型電子カルテの義務化を柱とする医療DXに強い警戒感を私は抱くのである。皆様はいかがであろうか。
6 対策
最後に対策について述べる。 まずは現状を見据えること。ここに記したことは決して著者の思い込みではない。現状を見据えさえすれば賢明なる皆様方には様々な対策が思い浮かぶであろう。それこそがネットの管理から逃れる対策であり、我々がシープルにならない様にする方策である。
最後にこの記事を書くにあたり北海道医報の記事に大いに啓発されたことも付け加えておく(註3)
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