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電子カルテの義務、強制など辞めてくれ
2030年に医療DXの一つの締めくくりとして、電子カルテの規格を統一して、すべての医療機関でその電子カルテを使い、それはしかもクラウド型電子カルテである、と。集まったデータを皆で共有して、医療情報を融通して医療の効率化を図るとともに、ビッグデータとして活用できる、ということを政府、デジタル庁、厚労省がぶち上げている。
まずは、謳い文句はどうでも良いが、義務、強制、となった瞬間、我々は業者の風下に置かれ、手間のかかることをしなければならず、良いように金をふんだくられる。それは皆様もオンライン資格確認の設備導入で十分にご経験されたと思います。
電子カルテの共有化とは具体的にどうのようなものかというと、電子カルテの規格にはいろいろあるが、「HT7 FHIR」なるものを規格とするそうです。
国際的な基準になりつつある、とのことですが、いつものように、耳障りが良いのか、悪いのか、嘘か、本当か、分からないような理由です。そもそも電子カルテに国際化が必要なのか? ともあれそのような状況だそうです。
ところで皆様の電子カルテの規格はすでに「HT7 FHIR」なのでしょうか。
私の疑問はメーカー自体が「HT7 FHIR」を採用することに賛成しているか、ということです。
先日、電子カルテの大手メーカー メディコム の職員と会いました。お尋ねしてみると、この大手のメディコムの電子カルテでさえ「HT7 FHIR」ではないそうです。現在、取り組み中とのことです。
それぞれの電子カルテのメーカーも自社の電子カルテを設計する際に一番良いと考える規格を用いてすでに作ったわけです。
河野デジタル大臣が「HT7 FHIRにするぞ」と言ったところで、皆、喜んで従うものでしょうか。河野デジタル大臣の今までのご実績を考慮すると私にはとてもデジタルに通じているとは思えません。現在それぞれのメーカーが真剣に考え抜いた末にある規格を選択して電子カルテを作っているわけです。
また我々にとっても規格が変わるということは深刻です。
新たな電子カルテを買い、今までのカルテの情報を新しいカルテに入れなければならないわけです。これは大変な作業で、職員総出で2週間くらい残業に継ぐ残業でやり終えたという話を聞いたことがあります。また、業者にデータ移管を依頼すると、かなり高額になるそうです(註)。
懸念は尽きないが、医師会の方とお話しすると意外と賛意を示す人が多い。
曰く。「統一の電子カルテができると診療情報を融通しやすい」とか「電子カルテの業者を変える時にスムースだ」などなど。
私は申し上げたい。それを実際にご体験されたのですか、と。
電子カルテの義務化に迂闊に賛成的なことを言うのは政治的にはいかがなものでしょうか。
皆様の電子カルテが統一基準のHT7 FHIRなるのにはまだまだ時間がかかります。業者が今、作成中ならぬ、検討中ということなのですから。
皆様が莫大な出費をしてその電子カルテを導入され、なるほど良いものだ、と。メーカーを変えてもすぐに新しい電子カルテに今までの情報が流し込める。もう自分は電子カルテメーカーの傀儡(くぐつ)から脱した、と実感されるのは何年後でしょうか。 どちらにしても2030年には絶対に間に合わないと思います。
医師会の理事の皆様におかれでは、とにかく、正体の分からないものには、迂闊に賛意を表明しないでいただきたい。最大限に警戒していただき、とにかく、義務、強制というものには絶対に反対していただきたいと思います。
註)電子カルテ データ移行には莫大な金がかかる(ようだ)
過去の事例
大手BMLはかつてはメディカルステーションという電子カルテを運営していたが、2014年ころ、クラリスに変更した。結局他社の電子カルテに鞍替えしたわけだが、互換性はなく、データ移行には大変なお金がかかったそうである、というお話 1件2万円だったそうである。
http://fushimikeimei.blogspot.com/2017/03/blog-post_74.html