2023年9月20日水曜日

2030年 電子カルテ共通化 その時に起こること

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2030年に現在、各社入り乱れている電子カルテの企画を統一して、その電子カルテを医療機関は必ず使うように義務化する、ということを政府自民党は目指している。 

 彼らが一旦このようなことを目指すと、耳障りの良いことばかりを出任せで言って来ることは、皆様も今までのいろいろなことでよくご存知だろう。

 少し話が逸れるが私が記憶していることを例として挙げておこう。

1)タクシーの規制緩和

  タクシーの料金が100円くらいになり、バスなどに乗るようにタクシーを気楽に利用できるようになるぞ、と言っていたが、実際は・・・タクシーの運転手さんの貧困化を招いて、今や成り手すら不足している。

2)外国人労働者受け入れ

 この時に、街で女の子をつかまえて「これからメイドさんを雇えるようになるぞ」と言っていたが、実際は・・・今や日本も貧乏の発展途上国、後進国となり、自分が外人のメイドさんになるのではないか。

3)札幌冬季オリンピック

 傑作だった。おそらく維新の人や開催に熱心な恩恵を受けられる人が言っているのであろう。

 札幌オリンピックをやったら、札幌と小樽を地下鉄で結ぶ、というのである。

 私みたいな反対派でも一瞬「へっ!? それはすごい」と思った。

 よく考えてみると、札幌や小樽の地理に通じていない人が出まかせを言っているだけなのだと思った。

 そんなことをしなくても、手稲のあたりで地下鉄とJRをつなげたら済む話であろう。

 

電子カルテの義務化、共通化でも、いろいろ「出まかせ」を言っている。

1)救急隊が患者を運ぶ時に素早く電子カルテにアクセスして患者情報を入手。的確な処置ができる

2)医療機関で患者さんを診る際に他の医療機関でのカルテにアクセスして診療情報を入手。スムースでシームレスな医療を提供できる。

 ちょっと聞くと医師である私にさえ素晴らしいお話に聞こえるが・・・ 

 カルテというものにはいろいろなことが書かれているもの。

 外来で話したことをいろいろ書いている。それが仕事ですから。

 腰痛で受診していても患者さんがお話ししてくれたことをなるべく書いている。

 腰痛のこと。いままでの既往歴 手術歴 お腹関連でも耳鼻科でも眼科領域でも 。

 家庭環境のお話も出ることも度々である。

 自分が、子供が、結婚した、離婚した、子供ができた、孫が生まれた・・・などなど。

 おめでたい話ばかりなら良いが、他の人に見られたら障りのある話だって多くある。

 例えば交通事故が起こった。同乗者は不倫相手、とか。

 そうであればそのようにカルテには書く。いろいろ躊躇している暇はない。

 それも有意な診療情報なのだ。

 ただ、そのようなことを他所に漏らしてはいけない、ということで我々には厳しい守秘義務が課せられている。

 言うなれば、外来とは、教会の懺悔室のようなもの。

 整形外科でもこのような感じである。

 産婦人科、泌尿器科、精神科であれば、もっと秘密で赤裸々な問診となるであろう。

 でも、これが絶対に他所に漏れる恐れがないとしているから患者さんは安心してかかれるのである。

 これが、共通化でシームレスにどこでもカルテが見られる?

 それで良いのですか?

 救急車に乗せられたら、救急隊がすぐにいろいろな病院のいろいろな自分のカルテにアクセスしてみることができる? 

 知り合いの医師の外来を受診したら、自分のカルテに受診ができる?

 それって、良いことなのですか。良いことばかりではない。

 悪いこともある。さわりのあることこともある。

 それが一発知られたら人生が終わる、ということもある。

 結婚相手が、婚約者が、自分の過去の産婦人科関連のカルテにアクセスができるとしたらどうでしょうか。

 いろいろお聞きしたことがある。

 他の病院のカルテを見るには、患者さんの同意が必要だ、とのこと。

 障のあることもあるのではないか、と思ってもそのような同意を主治医から求められて道義上、というか、心情的に患者さんが同意を拒むことができるのか?

 そもそもそのようなことで同意を求める方がおかしいのではないだろうか。

 今まで私どもは他の病院への診療情報の受け渡しは紹介状で行っている。

 そこに書く内容は必要な診療情報は漏らさずに書いて、障のあることは書かない。

 先の不倫相手と同乗していての交通事故であれば、「同乗者は不倫相手」のようなことは書かない。書かないが必要であれば先方の医師に電話で「同乗者は不倫相手でした。その辺のところ斟酌してご診療お願いいたします」とお伝えするだろう。

 電子カルテの共通化など良いことばかりではない。

  悪いこともあるし、悪い目が出たら、患者さんの人生を、幸せを一発で終わらせてしまうことだってあるのだ。 カルテとはそのようなものなのだ。 

 そのようなことを、我々医師も、国民も、そして何よりも政治家もきちんと頭を冷やして考えないといけないと思うぞ。 


目次 

9月14日分

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